一般的な介護職=きついというイメージが付いている原因と実際の現場の現状とこれからについて思うところを記事にしました。
現代の3K(きつい・汚い・給料安い)
一般的なイメージで介護の仕事は現代の3Kだと思われています。
たしかに、利用者の身体を持ち上げる身体介助があったり、他人の排泄物を処理する排泄介助があったり、平均給与も他の業種に比べて低いなど、マイナスイメージを取り上げるといくらでも湧いてきそうです。
現代はワーキングプアといった言葉が一般的になるなど、そもそも働いていても生活に余裕がない状態にある人口の割合が高まっていると言われる時代です。
そんな状況にあるなかで、介護の仕事はまだ需要が供給を上回っており、人材不足も相まって安定した職業と言えるのではないでしょうか。
介護の仕事はきつい?
そんな3Kのイメージがある介護職ですが、僕の実感として、それほどきつい仕事ではないです。
これは職場や正職員、派遣職員など立場の違いによって受け取り方は変わるかもしれませんが、派遣で介護職に就いた僕の印象だと介護職は楽な部類の仕事に入ります。
介護の仕事が楽に感じた理由については、こちらの記事に書いたのでよかったらご覧になってください。
仕事の合う合わないは人によって違って当然ですが、介護職がきついと思われている原因として正職員の人たちの働き方に問題があると思います。
正職員の人たちがサービス残業しすぎ
ほとんど、このことが介護職はきついというイメージを作っている原因です。
介護職にはサービス残業が付きものになっている現状が介護職のきついというイメージに拍車をかけています。
人手不足でも運営しないといけない
老人介護施設は利用者がいないと運営が成り立ちません。
他のサービス業では、お客様がいない場合は開店休業状態でヒマな時期や時間帯がありますが基本的に老人介護施設は満員御礼状態で運営しています。
しかし慢性的な人手不足から業務量は減らないのに、それを処理する人員が不足しています。
その部分のしわ寄せが、人件費として1番安い正職員に向けられています。
この点について、施設側がしっかり残業代を時間通りに支給しているのであれば、それを補うために新たな人員確保を積極的に行うべきですが、正職員は基本的にサービス残業で時間外に業務をこなしているので、人件費の面で施設の運営側がただただ得をしています。
正職員の勤務時間を時給換算してみる
そもそも、老人介護施設は売上の最大値が決まっているビジネス形態です。
現在、特別養護老人ホームの入居率は98%となっているのでほぼ満室状態です。
ということは、現状の売上(利用者の入居費用や介護保険料)が特別養護老人ホームの売上の最大値ということになります。
売上の天井が決まっているので、運営のかかるコストも固定していかなければならず、そのコストの中には介護職員の給料である人件費も含まれています。
こういった状態の中で、介護職員の給与を上げるためには、今回の処遇改善手当のように国からの働きかけがないと難しい業態だと言えます。
今の職場や勤務時間に満足していて介護職に対してやりがいを強く持っている方にとっては給料の上げ幅が緩やかであっても、安定して今の職場で利用者に寄り添って日々の業務を行っていくことだけでいいかもしれません。
しかし、一度ご自身の勤務時間を時給に換算してみるといかがでしょうか。
日々の時間外での会議や記録の管理やシフトの調整など、介護業務以外で残業代を申請せずに行っている仕事を時給に換算してみると、正職員のサービス残業がどれだけ施設の運営に貢献しているか浮き彫りになっていくと思います。
介護職員の働き方改革
僕は自分が働いた時間については、ちゃんと給料として反映してほしいと思っています。
老人介護施設は社会福祉事業で介護保険料という国民からの保険料で運営しており準市場と言われています。(準市場や介護保険制度についてはこちらの記事で社会学者の上野千鶴子さんが解説してくれております。)
国民から支払われている介護保険料を運営の柱として、さらに施設の規模によって売上の天井が決まっている業種なので、自分自身で働き方を考えないと今以上に待遇が改善されることはないでしょう。
特に社会福祉法人運営の施設の場合は、介護保険料依存のサービス提供体制によりこの傾向が強いと思われます。
介護職員の働き方改革は、国や施設の方針によって左右されるのではなく、まず自分の働き方や給与を見直し、より良い条件や今後のキャリア形成を考えて自分自身で起こさないといけないものであると考えています。
介護職の給料は安い?
一般的に介護職の給料は低い水準にあると言われています。
平成30年度の介護職員の平均給与は約360万円(額面)で、一般的な平均給与が約440万円だと言われているので、その水準に合わせるために厚生労働省主導で今回の処遇改善加算が行われました。
介護職の給与は仕事内容に見合ったもの
僕が介護職に就いて思うのは、介護職の給与は仕事に見合ったものであるということです。
実際に施設で介護業務をしていて、たしかに身体介助などで体力を使ったり、利用者の数が多くてその対応をするために業務量が一時的に多くなることはありますが、しっかり決められた時間内で業が終わり、一日実働8時間なのであれば介護職の給料は特に安い水準にあるとは思いません。
全体的な介助業務自体は、介護職の特殊技能だと思います。しかし、その特殊技能を使う仕事が介護保険料を使ったサービスである以上、介助業務についての評価や価値は変わらないと言えます。
この点について介護業務の価値を高めるためには、介護の仕事自体の世間の評価を高めたり、さらに特殊な(例えば利用者や介護職員の負担を劇的に軽減させるような)介護保険外サービスを提供していかなければ、介護職の行っている仕事の価値が社会的に価値があるものとしてその評価が上がっていくことはないと思います。
介護職員としてのスキルアップ
もし今後介護業界に大きな革新が起こるとすれば、それは
・介護ロボやAIの導入
・根本的なケアサービス体制の見直し
になると予測します。
介護ロボについては、ドラえもんのようなロボットが直接利用者を介助するようなものではなく、介護者に取り付けて身体介助の動作自体をサポートしたり、利用者に取り付けて日常動作のサポートをしてQOLが下がらないようにサポートするものになるようですし、
AIについては、利用者の排泄時間のデータを管理して適切なタイミングでお声がけできるようにしたり、食事量から栄養バランスを管理したりするシステムが開発されているようです。
これからの介護職員は、今後これらの技術が現場に導入されたときにそれらを有効に活用できるかという点も 求められてくると予測します。
導入以前にこれらの技術に触れる機会は少ないので、機会があればこれら技術の展覧会に参加したり、研修会に参加するしかありません。
現状、介護職のスキルアップとしてできることと言えば、例えば移乗補助のためのスライディングボードやスライディンシートを使えるようになるといったものでしょうか。
これらの移乗補助の道具は、自治体によって介助者の負担軽減のために使用が奨励されていたり、器具のレンタル費用の補助金が出ている場合があるので今後使用する施設が増えていくと考えられます。
またノーリフト(介護者ができるだけ利用者を持ち上げずに身体介助するという考え方)は、社会保障先進国の北欧などでは、10年以上前から導入されている考え方ですので、今後日本の介護業界でもその考え方が主流になっていくことは十分にありえます。
介護職員としての価値を高める
介護職員の仕事は、なにも介助業務に限ったことではなく利用者の適切ケアプラン作成のための観察やそれに対する知識も重要です。
もともと介護保険制度を整備した時の介護職の資格の最上級職がケアプランを管理・作成するケアマネージャーであることからもこのことは否定できないでしょう。
しかし、そのケアマネージャーも施設常勤の場合の平均給与では介護職員より低めに設定されていることが多く、給料よりも利用者に寄り添った社旗福祉へのやりがいが多く求められる職種になっています。
もし、自身の介護業界でのキャリアプランがケアマネージャーを経るものである場合は、一つの施設にとどまってこれらの業務を極めるのも一つの道だと思います。
僕の場合は、とりあえず現場に携わって、働いた時間の分は給料をしっかりもらうことが大切だと思っているので、
一つの施設に長く勤めて、正職員になって、いずれはケアマネージャーへ。
という道筋は考えていません。
それよりも、給与も待遇も良い条件の施設を探して、案件があればすぐに移れるように介護職に携わっていきたいと考えています。
介護業界自体はまだまだ未成熟市場と言われていて、今後も3年ごとの介護保険法の改正で介護職員の待遇は変わっていきそうなのでそのときに対応できるように自身のスキルや知識を身につけながら働いていくつもりです。
なので、施設を選ぶときも旧態依然の施設よりも、新しい技術を積極的に取り入れていたり、介護職員の待遇についてもサービス残業などの現在の問題点についてしっかり対応している施設を選んだ方が自分のためになると思っています。
そのためにも、働き方として正職員よりも派遣職員であるほうがメリットが大きいと考えています。